【医師監修】発毛剤の主成分ミノキシジルの発毛効果とは?メカニズムから副作用まで解説

現在、日本国内の薬局やドラッグストアなどで販売されている発毛剤には「ミノキシジル(minoxidil)」と呼ばれる成分が必ず含まれています。

ミノキシジルは強い発毛効果があることから、一般用の医薬品成分として認定されていて、2021年現在日本で市販されているものでは、この成分が配合されているものだけが「発毛剤」と呼ばれています。

ただし、ミノキシジルには高い効果がある反面、一定の副作用リスクがあったり、塗るタイプ(外用薬)と飲むタイプ(内服薬)があるなど、使う前に知っておいておいた方がよいことがいくつかあります。

このページでは、そんなミノキシジルのより具体的な効果のメカニズムやタイプの紹介、副作用などについてご紹介いたします。

なお、この記事は、できるだけ確かな情報をお届けするために、医学的専門知識に関して「皮膚科専門医」に監修協力を頂いて作成しております。

監修いただいた医師
医学博士 川﨑加織先生

皮フ科かわさきかおりクリニック院長。医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会専門医。 兵庫医科大学病院初期研修医、皮膚科入局からキャリアをスタートし、明和病院、西宮わたなべ前浜クリニック院長などを経て、現クリニックを開院。 皮膚科専門医として、女性医師として、母として、患者さんの心と身体に寄り添うことを信条としている。

ミノキシジルの基本的な効果

そもそもミノキシジルが配合されている発毛剤の説明書を読むと、その効果についてはどの商品にも必ず

壮年性脱毛症における発毛、育毛、及び脱毛(抜け毛)の進行予防

と書かれています。

壮年性脱毛症とは、思春期以降の男性によく見られる頭頂部(つむじ)や、生え際において、徐々に抜け毛が増えて薄毛になっていく症状のことです。

また、日本皮膚科学会発行の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」には、男性型脱毛症において、ミノキシジルの外用(塗る)は、「強く勧める」(推奨度:A)となっています。

リアップのヘアサイクルの説明

男性型脱毛症(AGA)は、男性ホルモンに関係する物質の影響により、髪の成長が阻害されることによって薄毛が進行していく症状で、薄毛になる原因の中で最も多いといわれています。

このように、ミノキシジルは幅広い薄毛症状に効果的ですが、突発的に起こる円形脱毛症や甲状腺などの病気による脱毛症には効果がないとされています。(くわしくは後半に解説)

では次に、具体的にどのように発毛させているのか、そのメカニズムを解説します。

ミノキシジルの具体的な効果のメカニズム

リアップのヘアサイクルの説明

そもそも髪の毛には、「ヘアサイクル」と呼ばれる髪の毛が生えてから抜けるまでの周期があります。

普通の髪の毛だとおおむね2~6年と長い期間で生えて抜けるを繰り返しています。

ところが、薄毛に悩んでいる人の場合、その周期が数ヶ月にまで短縮されてしまいます。

そうなるとせっかく生えた髪の毛は長く成長せず、弱くて細いまま抜けてしまい、その数が多くなると、薄毛が進行してしまうことになるのです。

「ミノキシジル」には、このヘアサイクルを短い状態から正常な長さに戻していく効果があります。

これを実現するために、ミノキシジルを塗ってからは次の3つの作用が髪の毛に対して行われています。

発毛に至る3つのメカニズム

薬の作用を研究し、定義している、公益社団法人日本薬理学会が発表している「ミノキシジルの発毛作用」という論文によると、

  • 血流改善作用
  • 毛乳頭細胞の増殖
  • 毛母細胞の死滅(アポトーシス)を抑制

大きくはこの3つの作用によって発毛に至ると推定されています。簡単に確認してみると…

1.血流改善作用

ミノキシジルを塗って最初に起こることは、頭皮の下にある毛細血管が広がり、通り道が広くなることで流れる血液が多くなります。

それにより、髪の成長に必要な酸素や栄養素を血液によって毛根へより多く取り込ませることができます。

薄毛の人の場合、そもそも血行が悪く、栄養状態が不十分なため、ヘアサイクルが短くなり、髪の毛がうまく育たない現象に陥っていると推定されています。

ミノキシジルによって血流を改善することで、髪の栄養状態も改善し、発毛を促していると推定されています。

2.髪の成長を司る毛乳頭細胞の増殖が行われる

毛根に栄養が十分に行き渡るようになる以外に、中にある細胞にも影響をもたらします。

最も影響を受けるのが、髪を生やすための様々な命令を発生させる「毛乳頭細胞」です。

毛乳頭細胞にあり、髪の成長に関わるVEGFやKGF といったタンパク質が産生することで活動が活発化し、発毛が促進されると考えられています。

3.毛細胞の死滅(アポトーシス)を抑制

毛母細胞とは、先ほどの毛乳頭細胞の周りにあって、血液から来た栄養などを髪の毛の成長のために受け渡しする役割があります。

ミノキシジルによって、この毛母細胞の寿命が長く、活発になることで受け渡しも活発になり、最終的に発毛効果を示すものと推定されています。

このように、基本的には流れる血流が増えることによって、髪を生やす部分が活発化することで発毛効果を得ることができると考えられています。

ただし、現時点ではミノキシジルの効果がすべて解明されているわけではなく、より詳しい効果は今後の研究が待たれるところでしょう。

ミノキシジルは毛細血管の密度が高い頭頂部で特に効果が高い

ミノキシジルは、毛細血管を広げ、血液の通り道を広げる効果がメインとなるため、血管の密度が高い場所ほど、効果も高くなります。

頭の部分にはびっしりと毛細血管が張り巡らされていますが、特につむじの部分にあたる頭頂部は血管の密度が高く、逆に生え際や側頭部、後頭部では、頭頂部ほどの血管の密度は高くありません。

ミノキシジルは毛細血管の密度が高い頭頂部であるほど、効果が特に出やすいとされています。

リアップのヘアサイクルの説明

市販されている発毛剤の説明書や箱には必ずこのような画像のように効果のある薄毛パターンが示されていますが、どのパターンも必ず頭頂部が薄くなっていることがおわかりいただけると思います。

ミノキシジルは配合される濃度が高いほど効果も高まる

配合されているミノキシジルの濃度が高ければ高いほど効果は高まります。

ただし、後ほどご紹介する副作用の兼ね合いから、現在日本においては、ミノキシジルの濃度に上限が設けられていて、現在市販の発毛剤で国内で認可されているのは

  • 男性用の発毛剤…最大濃度5%
  • 女性用の発毛剤…最大濃度1%

となっています。

濃度が高くなるほど期待できる発毛効果の期間は短縮されていて、ミノキシジル濃度1%では最低6ヶ月、濃度5%の場合、最低4ヶ月の使用で効果が現れ始めるとされています。

ミノキシジルは使い続けることで効果が高まる

ひとつ注意したいこととして、ミノキシジルを塗り始めたからといってすぐに効果がでるわけではありません。

先ほどもご紹介したとおり、効果が現れ始めるにはある程度の期間が必要です。

さらに、発毛は促進しますが、薄毛になる原因そのものを取り除くわけではありません。

そのため、使用をストップすると、再び薄毛の症状が進行することも考えられます。

目に見える効果を出し続けるためには、1回だけで終わらせず、使い続ける必要があることを注意しておきましょう。

さらにミノキシジルは良い効果だけではなく、次にご紹介する副作用のリスクも存在しているので次にご紹介いたします。

ミノキシジルには、いくつかの副作用リスクもある

リアップのヘアサイクルの説明

そもそもミノキシジルは、発毛成分として開発されたわけではありません。

1960年代にアメリカで血圧降下剤として高血圧の患者さんに処方されていた経口薬として発売されました。

すると、服用していた高血圧の患者たちから続々と毛髪が増加したとの報告がなされ、副作用としての発毛効果に注目が集まりました。

そこから本格的な発毛成分としての研究が始まり、1980年代にアメリカで、ミノキシジル2%配合の発毛剤が販売され、1999年には日本でも発売された経緯があります。

ただし、発毛成分として生まれ変わったといっても、それに特化されたわけではなく、副作用が存在しています。

発毛剤の説明書には必ずこのような副作用リスクがあると書かれています。

循環器系血圧低下・心拍数の増加・心筋梗塞
皮膚発疹・かゆみ・かぶれ
神経系頭痛・めまい・胸痛
代謝系急激な体重増加、手足のむくみ

ただし、すべての副作用が均等に起こるわけではなく、この中で実際に起こりやすい副作用をご紹介すると…。

皮膚にかかわるトラブル

ミノキシジルを塗った部位を中心に次のような副作用が起きる可能性があります。

  • かゆみ(そう痒感)
  • 発疹
  • 皮膚の赤み(紅斑)
  • ふけ(頭都粧糠疹)
  • 接触性皮膚炎

皮膚のトラブルは、重篤ではないものの、比較的起きやすい副作用であり、万が一起きてしまった場合は直ちに使用を中止し、数日経っても改善が見られない場合は最寄りの皮膚科などへの相談をおすすめします。

頭痛やめまいなどのトラブル

もともと血圧を下げて血管を広げる薬であるため、使う方によっては血圧の変動によって頭痛やめまいなどが起こる場合があります。

このような副作用のリスクがあるため、ミノキシジルが配合されている発毛剤の取り扱い説明書には以下のように注意が喚起されています。

してはいけないこと

  • リアップ又はリアップに含まれる成分により過去にアレルギー症状を起こしたことがある人。
  • 未成年者(20歳未満)
  • 壮年性脱毛症以外の脱毛症(円形脱毛症,甲状腺疾患による脱毛等)の人,あるいは原因のわからない脱毛症の人。
  • 脱毛が急激であったり,髪が斑状に抜けている人。

医師、または薬剤師に相談すべきこと

  • 今まで薬や化粧品などでアレルギー症状(発疹、かゆみ、かぶれなど)を起こしたことがある人
  • 高血圧・低血圧の人
  • 心臓または腎臓に障害のある人
  • むくみのある人
  • 家族・兄弟姉妹に壮年性脱毛症の人がいない人
  • 高齢者(65歳以上)
  • 甲状腺機能障害の診断を受けている人

これらの注意を確認の上、該当する方は、使用を控える、もしくは医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

ミノキシジルの副作用についてはこちらのページでもよりくわしくご紹介しています。

ミノキシジルには飲む内服薬タイプもある

薬局やドラッグストアで購入できるミノキシジルの発毛剤は頭皮に塗り込む外用薬タイプですが、海外などでは、タブレット状になった飲む内服薬タイプも発売されています。

体内に直接服用することで、より効果が高いとされていますが、それに応じて市販の発毛剤に比べて副作用が現れるリスクも飛躍的に大きくなります。

さらに、市販の発毛剤にはない、多毛や一時的な脱毛といった副作用も存在します。

薄毛治療薬としての国の臨床試験も実施されていないため、現在日本国内においては認可はされておらず、市販もされていません。

また、最初にご紹介した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」のおいても「ミノキシジルの内服を行うべきではない(推奨度:D)」とされています。

ミノキシジル内服薬は

  • 一部の薄毛治療クリニックなどで医師の診察によって処方される
  • 海外で認可されている医薬品を個人輸入で購入する

で入手すること自体は可能です。

ただし、先ほどもご紹介したように実際に利用するには大きな副作用リスクが伴いますし、専門医師の見解では使用を奨められているものではありません。

特に海外からの個人輸入の場合、服用によって重篤な副作用が起こったとしても、未承認薬のため、医薬品副作用被害救済制度の救済対象にならず、すべて自己責任の対応となります。

医師からの診察によって処方がすすめられたとしても、自由診療のため、治療に伴うリスクはすべて自己責任となります。

処方を担当する医師から副作用のリスクなどをよく聞いてから慎重に判断するようにしましょう。

ミノキシジルの発毛剤は効果と副作用のバランスを考えて使用しよう

リアップのヘアサイクルの説明

このように、ミノキシジルには高い発毛効果があり、配合されている発毛剤は薄毛に悩む方にとってもっとも手軽で有効なアイテムといえるでしょう。

ただし、

  • 効果が出るまでには一定の期間がかかる
  • 皮膚のトラブルを中心に副作用リスクもある
  • 使える人、使えない人がいるので説明書をよく読む

といった注意点もあることも覚えておきましょう。

ミノキシジル配合の発毛剤は、低価格のもので3,000円台から多数のアイテムが発売されています。

また、薬局やドラッグストアはもちろん、ネット通販などでも市販されているので入手はしやすくなっています。

メリットとデメリットをよく理解しつつ発毛剤をお使いになられることをおすすめします。

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